家を買う前に知っておきたい会津のハザードマップ

家を買う時に、「こういう家が欲しい」という要望がいくつか思い浮かぶのと同時に、逆に「こういう家は避けたい」という事柄もいくつかあると思います。

例えば、寒い家にはしたくない、長持ちしない家は嫌、災害に遭わない場所に建てたい、などです。

暖かい家や長持ちする家は建築屋さんを選定する時の重要事項になりますが、災害の部分で言うと、土地や中古住宅購入の前段階で気をつけるべき事項で、とても気になるところですよね。

そこで役に立つのがハザードマップです。なんとなく感覚として、川が近いな、とはわかると思いますが、災害発生時にどの位の浸水の可能性があるのかはハザードマップを見ればわかります。

土地や戸建て、中古住宅を買う時(物件と価格についての説明が記載された、重要事項説明書の説明時)には不動産屋さんがハザードマップに基づいて説明をすることが、国土交通省により2020年8月に義務化されましたが、その時に知るのでは遅すぎますよね。

事前に自分が家を買う土地はどのような場所なのかを理解することで、安心して暮らすことができますし、どんなことに気を付けて良いのかがわかりますので、必ず事前にチェックをおく必要があります。

では、ハザードマップには何が載っていて、どんな注意点があるのかを一緒に見ていきましょう。

ハザードマップから読み取れる情報

ハザードマップは、河川洪水の浸水想定情報に加え、土砂災害に関する情報や避難所・避難場所、さらに災害時に役立つ情報サイトなどをまとめたものになります。

会津若松市のハザードマップは下記をご覧ください。

会津若松市ハザードマップ

https://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/docs/2009031200029/

地図サイトで確認したい箇所をピンポイントで見ることが出来るハザードマップと、PDFとの2パターンがありますので、見やすい方で確認してください。

特定の地点について確認したい場合は、地図サイトで確認した方がわかりやすいと思います。

ハザードマップで確認出来ることとしては、洪水浸水・土砂災害・最大震度・液状化などの複数の災害についての記載があり、それぞれの内容は下記の通りです。

洪水浸水想定区域、浸水継続時間

想定し得る最大規模の降雨により、河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域の、浸水の水深・時間が記載してあります。

PDFと地図サイトのハザードマップのどちらも、大雨で河川が氾濫した時に予想される水深を表してあり、水深が0.5mであれば大人の腰までつかる程度(床下浸水)など、水深別に図と色で記載があります。

後ほど「浸水の可能性がある地域に家を買うべきか否か?」で、水深別の解説と建物倒壊エリアについて説明します。

土砂災害警戒区域

急傾斜地におけるがけ崩れや土石流、地すべりなどが原因となり生じる被害のことで、土砂災害の可能性があると予想される地域が色でわかります。

後ほど「土砂崩れの可能性がある地域に家を買うべきか否か?」のところで、土砂災害のイエローゾーン・レッドゾーンについて説明します。

ため池浸水想定区域

農業用水などの確保のために作られた人工的な池から、浸水が想定される区域を色で示したものです。

会津若松市内で色がついている箇所は、南側のあいづ球場方面、そして湊町・大戸町で、門田町御山や門田町一ノ堰付近の最大浸水深は25㎝、大人の膝下位です。

この周辺は田んぼも多くあり、市街化調整区域(農業などが中心の地域で、土地の売買や建物の建築が抑制される)の部分も多い地域です。新たに土地を買って、家を建てる可能性は低いので、これからマイホームを求めるという方はあまり気にしなくてもいい情報かとは思います。

あいづ球場の東側~道路の間の一部分は1.0~2.0mと最大浸水深が高いのですが、住宅が建つところではありません。

内水ハザードマップ

短時間の集中豪雨(ゲリラ豪雨)により、下水道雨水幹線や水路などで排水しきれない雨水があふれ、浸水が発生した場合などを想定した浸水区域や浸水の深さを色で示したものです。

会津若松市内の様々な箇所に色がついていますが、そのほとんどは10~30㎝未満になります。

ただ御旗町、住吉町、材木町、柳原町、飯寺北、城南小の道路向かい付近や、あいづ球場の南西付近と水路の合流地点では、30~50㎝未満の箇所もあります。

近年、会津若松市内でもゲリラ豪雨による浸水被害が相次ぎ、市では被害軽減のため、2021年度から10年掛かりで治水対策を進めています。

具体的には、水路の幅の拡張や、雨水を地中に染み込ませる施設の整備などです。

そういった対策により今後改善されていくとは思いますが、ハザードマップ上の浸水深さ30~50㎝の道幅が狭く、側溝が狭くて浅い、住宅が密集している地域については、まだまだ注意が必要です。

土地や中古住宅を購入するかどうかですが、30~50㎝の箇所はそこまで多くは無いので、あえて選ぶ必要はなさそうです。

10~30㎝の箇所については、広範囲になるので、検討からは外さず、不動産屋さんを通して近隣の方に豪雨時の状況を確認してもらうといいでしょう。

2022年3月浸水被害軽減のための対策を強化とテレビ放映された。

最大震度(東縁断層帯・西縁断層帯)

東と西に分けて、震度7までの最大震度を震度で色別に記載があります。

会津盆地には、東縁と西縁に活断層帯があります。

東縁は、耶麻郡北塩原村から喜多方市、耶麻郡磐梯町、会津若松市を経て南会津郡下郷町に至る長さ約49㎞、西縁は喜多方市から、河沼郡会津坂下町を経て大沼郡会津美里町に至る長さ約34㎞の断層帯です。

会津の東縁と西縁の活断層帯

西縁断層帯の最新の活動は1611年(慶長16年)の会津地震だった可能性、東縁断層帯は約2千年以上前のようです。

どちらも、この断層帯全体が1つの区間として活動した場合の地震発生で、想定される最大震度は西縁断層帯で5強~6強、東縁断層帯で6強~7です。

将来の地震発生の可能性ですが、政府の地震調査研究推進本部事務局によると、西縁で30年以内にほぼ0%、東縁で30年以内にほぼ0~0.02%です。

地球で捉えると1,000年単位で活動するもので、30年は一瞬のことなのかもしれません。近い将来の活動の可能性としてはほぼ0とありますが、絶対に地震が無いと言い切るものではないですし、地震の無いところに家を建てることも難しそうです。

そうであれば、“活断層帯がある”という事実を知ることと、地震に強い家造りや家電が倒れない対策、住宅と家財の地震保険への加入などへの備えが必要になります。

液状化

通常時は十分に固い地盤であっても、地震の揺れによって地盤が液体のようになり、地盤内の砂混じりの水が表面に湧き出してくる現状のことです。

テレビでも道路が割れてマンホールが地上に盛り上がっている映像を観たことがあるかとは思いますが、液状化になると、地盤が軟弱化して、部分的に陥没して建物が傾いたり、地中の配管が浮き上がってきたりします。

液状化は、①地盤が砂質地盤であること、②地下水位が高いこと、③地震などにより大きな振動が生じることの3つの条件がすべてそろった時に発生するもので、逆に1つでも条件が欠ければ起こりません

会津若松市街地の土地の成り立ちは、河川によって運ばれた砂礫(砂と小石)や泥が堆積して出来た平坦地で、活断層帯もあり、市内全体が液状化になる可能性があります。

ただ、ハザードマップ上で見ると、市内の液状化になる確率は0.1%~1%ですので、気にすることはなさそうです。

浸水の可能性がある地域に家を買うべきか否か?

会津若松市全体で見ると、西側と南側の広範囲が洪水浸水想定区域に該当し、東側の山側は土砂災害の恐れがある地域になります。北東は洪水や土砂災害は該当しないエリアです。

購入を想定している箇所や付近に、「大量の雨」が降った場合に、どれくらいの水深が想定されるのかは、ハザードマップ上の色で確認し、同時に近くの避難場所も確認してください。

ちなみに、「大量の雨」ですが、ハザードマップの洪水浸水想定を算出するための前提となる雨量は、想定しうる最大の48時間の総雨量533mmです。

気象庁の大雨・洪水警報の1時間の雨量は50mm以上、総雨量が120mm以上なので、533mmは1,000年に一度レベルの大災害を想定されているということになります。

河川のすぐ側には、「家屋倒壊エリア」になっている箇所もあります。

ハザードマップ上では線で囲われて、斜線が引いてあるので、一目でわかります。

神指町、柳原町、御旗町、門田町飯寺上川原のそれぞれ一部や、南花畑や館脇町などの川沿いの一部がそのエリアに該当しています。

家屋倒壊エリアでも売地や中古住宅の販売はあり、購入は「買う側の自由」ということになります。他の地域よりも値段は安めに設定される可能性があるので、価格を魅力と感じて購入する方もいるでしょう。

ですが、大雨の度に心配したり不安になりたくはないですし、将来、売却したい時にかなりの安価になる可能性があります。いつまでも売れ残る可能性もありますから、わざわざ家屋倒壊エリアの土地や住宅を購入する必要はないでしょう。

建物倒壊エリアは検討しないとしても、会津若松市で洪水浸水エリアは広範囲になりますので、そのエリアからは購入しないということは選択肢をかなり狭めることになります。

お子さんの学区内すべてが浸水想定箇所ということもあります。ハザードマップ上の色が、何色なのかで予想される水深の目安がわかります。

黄色・・・0~50㎝、

黄緑・・・50㎝~1m、

水色・・・1~2m、

青紫・・・2~5m、

紫・・・5m以上

紫の箇所に関しては、範囲が狭いことと家を建てるエリアではないのでここでは無視をします。

明るい紫が5m以上のエリア

重要なのは、水色や青紫のエリアです。

このエリアは会津若松で家を買う人が検討をする可能性のあるエリアで、希望をする土地や物件がこのエリアになっていることも十分に考えられますし、現状多くの家が建っています。

このエリアを避けたほうが良いのか?ということですが、私は避けるまでの必要はないと考えています。

なぜなら、かつては大型の台風により甚大な被害を受けていましたが、一番直近の被害で昭和33年です。それ以降の半世紀以上、阿賀川が氾濫して会津若松市内が被害にあったという記録はありません。

もちろん未だかつて無い程の大型台風や豪雨により、被害に遭う可能性はゼロとは言えませんし、その最大の被害度を表しているのがハザードマップになりますので、そうなった場合どうなるかは知った上で判断することと、備えは必要になります。

そして、家や家財を守るために、浸水被害には火災保険で備えることができます。

浸水の恐れがあるエリアに家を買う時は、火災保険への加入の仕方が重要になってきますので、これから詳しく見ていきたいと思います。

浸水に火災保険で備える方法

新築・建物購入時は火災保険に必ず加入します。火災保険は、ベースとなる建物の火災・破裂・爆発以外はすべてオプションになります。

その中に、『水災』という項目があり、これが浸水時への備えになります。

具体的には、火災保険の加入時に水災をオプションとしてつけると、家が浸水してしまった時の建物の修理費やテレビやソファなどの家財の補償を受けることができます。

なるべく費用を抑えたいという視点で火災保険の補償を選ぼうとすると、「水災」の保険料がとても大きく感じてしまうと思います。

10年の火災保険で約22万円程度の保険料が、水災を付けると30万円は超えてきます。

(尚、2022年10月より、火災保険は値上げ+最長加入期間は5年までと変更になります)

確かに10万近い出費は痛いかもしれませんが、年単位で見れば1万円程ですので、洪水浸水想定区域に該当して、黄緑以上の色の箇所であれば、水災はつけておくべきでしょう。

ちなみに、水災の補償は、床上浸水だけではなく、暴風雨、豪雨、洪水、高潮、土砂崩れ、融雪洪水などで被害を受けた場合にも補償の対象となります。

ただし、保険会社によって補償の範囲は異なる場合があるので、どのような場合に補償の対象になるかは確認しておく必要があります。

建築屋さんでも火災保険を扱われているケースがあり、以前聞いた話によると、火災保険は補償内容ではなく、安さ重視で加入してもらっているということもあるようです。

お客様が内容までしっかり把握されて加入されているかは不明で、どういう説明をされているのかもわかりませんが、起こるかどうかがわからない災害への備えは不要というお考えなのでしょう。

これでお客様を守れるのかは甚だ疑問です。

建築屋さんから火災保険を提案されても、家を建ててもらったからそのまま加入しなければならないということはありません。複数箇所から見積もりを取って説明を受けることをお勧めします。

土砂崩れの可能性がある地域に家を買うべきか否か?

土砂災害から国民の生命・身体を守るため、土砂災害(急傾斜地の崩壊、土石流、地すべり)のおそれのある区域(土砂災害警戒区域(イエローゾーン)、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン))が土砂災害防止法に基づき、指定されています。

茶色の斜線は土砂災害警戒区域(イエローゾーン)

2カ所の違いは下記の通りで、レッドゾーンはイエローゾーンよりも危険度が増します。

土砂災害警戒区域(イエローゾーン)

土砂災害警戒区域(イエローゾーン)

住民に危害が生ずるおそれがあると認められる土地のことをいいます。

この地域では、

・土砂災害発生の恐れがある区域ということを明らかにすること。

・警戒避難体制の整備を市町村の義務で行う必要があります。

土砂災害警戒区域(レッドゾーン)

住民に“著しい”危害が生ずるおそれがあると認められる土地のことをいいます。

この区域では、

・土地の開発が制限されます。

・建物を建てる時に土石に耐えられるように家の周囲にコンクリートの頑丈な擁壁が必要になります。

・すでに建っている住宅の移転促進等の対策を義務付けられます。

レッドゾーンの土地を買うことになった場合は、擁壁などの工事費が掛かるということになるということなのですが、つまり、さまざまな制限はあっても、土地の売買や建築は可能ということになります。

宅地建物取引業者は土砂災害警戒区域等であることの説明義務がありますから、知らずに購入する、ということはありませんが、契約当日に重要事項説明書で知るということの無いように、ご自身でもハザードマップでの確認は必要です。

会津若松市内の土砂災害警戒区域はいくつかあります。

まず、飯盛山~東山へ行く街道付近では、飯盛や和田の一部、東山温泉に通じる付近、門田黒岩、北御山付近が土砂災害警戒区域(イエローゾーン)になっています。

和田の山際の一部と、東山小の脇付近は土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)になっています。

土砂災害警戒区域については、あえて選択する必要はないと思いますが、小学校が土砂災害警戒区域内にあるケースが市内にはありますので、学区内に家を求めようとすると、土砂災害警戒区域に該当してしまうということがあるかもしれません。

土砂災害特別警戒区域で家を建てる時は、住宅建築する場合の長期優良住宅の認定が受けられない、また、住宅金融支援機構の住宅ローン「フラット35」で金利優遇が受けられない(ただし、優遇が受けられないだけで申込みの受付けは可能)などの制限があります。

どうしても気に入って、という場合は、火災保険のオプションで水災を付けて備えることをお勧めします。

土砂災害は水災でカバーされますが、尚、加入される保険会社に念のため確認をしてください。

将来、土地建物を売却したいと思った時に、土砂災害警戒区域であれば、他の土地と比べて積極的に欲しい方は多くありません。危険なだけでなく、資産価値という点でも他に余程の理由がなければ、選択肢に入れる必要はなさそうです。

ハザードマップには出てこない積雪の情報

会津は雪国なので、除雪が入るかどうかは超重要事項ですよね。

それは土地が面している道路が市道なのか、私道なのかによります。

市道の除雪は「市道除雪網図」で確認することが出来、積雪10㎝以上で、その後も積雪がある場合は除雪車が出動してくれます。

会津若松市 市道除雪網図

https://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/docs/2009030900012/

市道除雪網図は、除雪を行う路線の確認と、市の直営か、委託業者なのかの作業車の確認、早出路線(概ね朝7時までに除雪を完了する路線)か、日中路線(早出路線の除雪が完了次第、除雪する路線)かの確認が出来ます。

片側2車線ある道路は、朝5時頃には除雪されていますが、片側一車線の道路は朝6時では除雪車が来ていないことは多くあります。出勤が早い方は、早出路線を確認してください。

除雪車が通ると、道路の除雪はしてもらえることになりますが、車を道路に出すまでや、歩道の除雪は各自になります。

雪捨て場の確認や、私道の場合の除雪の分担の仕方は不動産屋さんを通して、近所の方や区長さんに確認してもらってください。

また、隣の家から雪が落ちてこないかどうかも大事になってきます。

もし自分がその土地に家を買った場合、雪が隣から落ちてこないかどうかは確認するようにしましょう。屋根がその土地の方を向いている場合は、ちゃんと雪止めがあるかどうかを見る必要があります。

会津にお住まいの方は積雪には慣れていますので、10㎝程度の雪は何とも思わないはずです。でも、一晩で30㎝以上積もると、朝早く起きて除雪が必要になりますから、さすがに慣れていてもへこみますよね。

そこに、除雪車が入ってこない、雪を捨てる場所が無い、隣からの雪が落ちる、等々は長く住んでいく上でのストレスとご近所さんとのトラブルの元ですので、買う前に確認しておきましょう。

まとめ

会津若松市のハザードマップから読み取れる情報と不動産購入についての要点をまとめていきます。

洪水浸水想定区域

浸水想定水深を確認した上で購入を検討して、50㎝以上には火災保険の水災オプションを付けて備える。 「建物倒壊エリア」は外して検討する。

土砂災害警戒区域

「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」はあえて選択しない。

「土砂災害警戒区域(レッドゾーン)」は外して検討する。

ため池浸水想定区域

該当箇所が売りに出る可能性は低い。門田方面で田んぼが近い時はハザードマップ上で念のため確認する。

内水ハザードマップ

地域によってはゲリラ豪雨により浸水被害の可能性があるため、30~50㎝の浸水箇所は選択しない。

最大震度(東縁断層帯・西縁断層帯)

活断層帯があり、大きな地震の可能性はどの地域でもあるため、建物・家具の備えや地震保険の加入は必須。

液状化

どの地域でも可能性はあるが、低い。

ハザードマップには出てこない積雪

除雪車が入ってくる道路なのか、雪捨て場の確認をする。

現在、ハザードマップのように大災害を想定したものとは別に、30年に一度程度の現実的なリスクを想定した「リスクマップ(仮)」が作られているそうです。

令和3年度内には公開ということで、完全版が公開されるというよりは、徐々に精度が上がっていくものになっているようです。

今後、そういったものもぜひ参考にしてください。

さまざまな情報を重ねることで精度は高めて、大切な命と財産を守りましょう。