失敗しないマイホーム購入の始め方

「マイホームが欲しい」

ご結婚、お子さんの誕生、小学校入学などの節目に広いところに引っ越したい、周囲への音を気にせずお子さんを走らせたい、ワンちゃんと一緒に暮らしたい、親御さんと同居したいなど、“将来の我が家”を想像すると、とてもわくわくしてきますよね?

わくわくするのと同時に、マイホームは安い買い物ではないので、理想の我が家はどの位の額になるのかも気になるところです。

マイホームは大きな額なので、住宅ローンを組むことになります。

どこでいくら借りるのか、毎月の返済額、何年間返済し続けるのか、皆どうやってやりくりしているのか、考えているとじわじわと不安が押し寄せてきます。

初めてのことですから不安を感じることは無理もないですよね。

マイホームは人生最大の買い物で、教育費・老後費と並んで、人生三大資金の一つとも言われています。

人生の資金が“一大”であれば、マイホームのことだけ考えてある程度のお金を掛けられそうですが、他の二大資金とのバランスも必要です。

私は会津でこれから家を買う人の相談に乗っていますが、ほとんどの方は正しいマイホーム購入の順番を知りません。

なぜなら、一般的にマイホーム購入検討を進める時に相談するのは住宅の売り手の住宅会社さんや不動産やさん、住宅ローンを貸す側の銀行さんなど、『売り手側』の業者さんばかりだからです。

売り手側の業者さんは、正しいマイホーム購入の順番を教えてはくれません。

それを教えることは利益に繋がらないからです。

正しい順番を知らないと、購入後に、“こんなはずじゃなかった”と後悔してしまうかもしれません。

では、大きな買い物のマイホーム、「他では教えてくれない正しい順番」とは、何から順にどう進めて行けばいいのでしょうか?

間違い:まずは住宅展示場に行って夢が膨らむ

住宅展示場に行って最新の建物を体感する、不動産のポータルサイトで土地探しをする、地域差もあるかもしれませんが、会津地方ではこのどちらかから始める方が多いようです。

例えば、展示場に行くことから家造りをスタートしたとします。

展示場に行くと、営業の方が丁寧に案内してくれます。

広々としたリビングや清潔感溢れるキッチン、ランドリールームやウォークインクローゼットにこんなスペースがあったら収納いっぱいでいいなぁと夢がどんどん膨らみます。

住宅展示場イメージ

一通り案内してもらいながら見学した後に、営業の方から家造りについて話を聞かれます。

お勤め先や年収に触れつつ、間取りや設備など、家への要望などを伝えていると、“そのご要望で一旦、間取り図面を作って、概算見積もざっくり作ってみましょう”、という話になり、流れるように依頼します。

現実になる住宅ローン返済

後日、ウキウキしながら、間取りを確認しに行きます。

先日話した要望にぴったりです。

立体的な図面も作ってあり、イメージが膨らみます。さらにウキウキです。

次に、作ってもらった概算見積を確認します。ざっくりとは言え、資金計画書が出来ていて、住宅ローン借入金額、月々の返済額まで載っています。よく見ると、夫婦二人の連帯債務、借入金額マックスでフルローン。

月々の返済額は今の家賃に+4万円。

「・・・え?家ってこんなにするものなの?」

さっきまでのウキウキは消え去り、一気に住宅ローン返済が現実になって、心に不安が広がります。

営業の方は、

皆さんこれくらいは借入して返済していますから、大丈夫ですよ

と言います。

“家は欲しいけど、本当にそうなの?子どもの大学費用とか払えるかな、退職金でローンって返済終わるのかな、老後に年金ってどのくらいもらえるんだろう、でもみんなこの位は借りてるって言ってるし、他が大丈夫ならうちもいけるはず・・・。それに住宅のプロがそう言ってくれてるんだから大丈夫だよね!?”

・・・と心に浮かんだ不安を掻き消すように自分に言い聞かせますが、このように不安を抱えたまま、進んでしまってもいいものでしょうか?

教育・老後に来る「しわ寄せ」

マイホームは簡単に返品が出来る買い物ではないですし、住宅ローンも返済中にやっぱやーめた、が出来ません。

住宅会社から出してもらった見積金額に、“自分たちが合わせて”ローン借入額を決めると、その額が自分たちに合っていない、つまり、オーバーローンになっている可能性があります。

借入額が大きくて自分たちに合っていないと、当然、月々の返済額も大きくなり、毎月のやりくりが苦しくなります。

せっかく何度も打合せを重ねてきて、広いリビングで家族仲良く過ごすことを想像していたのに、長ーい住宅ローン返済を考えると不安が押し寄せてきて、新居の生活を楽しめない・・。

そんな新生活にはしたくないですよね。

家は持てても、毎月の返済が大変だったり、レジャーや旅行を切り詰めなければならない・・・。これでは生活が楽しくありません。

三大資金の住宅・教育・老後のお金の配分が崩れて、住宅費ばかりが大きくなってしまうと、

子どもの大学費用の捻出が出来なくて、教育ローンで借入をして、住宅ローン返済との二重返済になったり、、、

一人目のお子さんの大学費用が準備出来ても、二人目、三人目の方の大学費の準備をする資金が無くなってしまったり、、、

老後への備えを使い果たして、いつか来る介護費用に怯えることになったり、、、

退職金で住宅ローンを完済できなくて、毎月の返済額が年金生活を圧迫して、旅行や孫への小遣いなどの余裕がない等、、、

教育費や老後にしわ寄せがいく可能性もあります。

これから何十年も大切に住み続けるマイホーム。

不安でいっぱいなままではなくスタートするには何から始めればいいのでしょうか?

家にかけてもいい、自分たちの予算を知る

まず最初にやるべきことは、展示場に行って見積もりをもらうことや土地を探し出すことではなく、「住宅に掛けてもいい、自分たちに合ったマイホーム予算」を知ることです。

営業の方から見積を出してもらって、それに合わせることは自分たちに合っているとは言えません。

合わせるのは見積ではなく、自分たちの収入と支出から計算する「ライフプラン」です。

「ライフプラン」とは、自分たちの一生涯で得る収入と、これから先の人生の支出をすべて洗い出して、グラフを作って自分たちのお金を見える化するものです。

現在の預貯金額などの資産が年齢を重ねるごとに、どう推移していくかがわかるので、20年、30年後にいくらの資産を築けていそうか、あるいは赤字になっているのかを確認することが出来ます。

自分たちのライフプランを作ることにより、これから先100歳までの収入と支出を想定して、教育費にお金が掛かる時期や、退職して年金生活になってからも蓄えを保ちながら、楽しく生活が出来るマイホーム予算を知ることが出来ます。

マイホームに掛けてもいい予算を知ってからスタートすることにより、このようなメリットがあります。

住宅ローンの返済が大変にならない

適切な予算の中でマイホームを買うことによって、人生の中で一番お金のかかる時期(子供が大学に進学する時)でも家計の余裕度がわかるので精神的にとても楽になります。

他の支出を圧迫せず、楽しく生活できる

住宅ローン返済が生活費を圧迫しないので、レジャーや買いたいものを我慢せずに生活を楽しめます。

老後にお金を残せる

マイホームに予算を掛け過ぎないので、老後への資金を使い果たしてしまう心配がなく、介護への備えも残し、老後不安を防げます。

マイホームにお金を掛け過ぎて後悔するのを防げる(予算がオーバーしてしまう住宅会社を選ばずに済む)

“せっかくのマイホームだから”、と自分たちに合っていない住宅会社や予算で話が進み、このまま進んでいいのかがわからず、打合せや完成が全く楽しめず不安しかない、という状態を防ぐことが出来ます。

ライフプランを作るにはどうしたらいい?

簡易的にシミュレーターでライフプランを作ることも出来ますが、ここではしっかり作る場合に必要なものを挙げていきます。

エクセルでご自身で作ってもいいですし、ウェブ上のライフプランソフトなどでも作ることが出来ます。

1年間の収入ー支出=金融資産残高が年々どう積み上がっていくか、を見ていきます。

揃える手間は少し掛かりますが、きちんと資料を準備することでより実際に即したライフプランが出来上がります。

一生涯の収入と支出、現在の預貯金額などを下記に沿って書き出してください。

収入について

収入は直近の源泉徴収票を基にし、過去の源泉徴収票を見てベースアップを確認します。

何歳まで働くかですが、70歳まで働けると思っている方もお身体の具合で働けない場合、老後の計算に影響が出るので、65歳まで働く計算にしてください。

転職する可能性がある方も、今の収入は維持できるものとして入れてください。

退職金は勤務先の制度により退職金がいくらもらえるのか確認しておいてください。

年金については、ねんきんネットでこのまま働き続けた場合の年金受給額を試算してください。

支出について

「毎月」と「年間」、「将来」に分けて支出を書き出してください。

「毎月」は、

生活費(食費、外食費、水道光熱灯油費、通信費、医療費、日用品費、レジャー費、美容・被服費、新聞・本費、嗜好品費、ご夫婦それぞれのこづかい等)

車の費用(ガソリン代、車の保険)

子ども関連費用(保育費、学校費(制服、教科書代含む)、通学費、習い事・塾費、部活費)

保険料(医療保険、終身保険、学資保険などの生命保険料)

その他、毎月返済があるもの(クレジットカード分や分割払い分)

「年間」は、

税金(固定資産税、自動車税)

車両維持費(車検、タイヤ購入、オイル交換)

旅行・帰省費

予備費(冠婚葬祭、家電買替等)

「今後」は、

車の購入予定(例えば10年に1回300万円で購入、など)、

子供の大学費用(学費は大学のホームページ、生活費は日本学生支援機構の生活調査を参考)、成人式・結婚費用

マイホームを長く住み続けるためのメンテナンス費用(屋根や壁の塗り替え、水回り設備交換など)

必要な場合は、親御さんへの仕送り・介護費用・相続費用(葬儀、実家売却もしくは解体など)

上記を書き出してください。

ここまで書き出せたら、収入・支出・預貯金額を入力し、最後にマイホーム予算を入れていきます。

マイホーム予算は、例えば、土地1,000万円、建物2,300万円、諸費用200万円で合計3,500万円と入力し、一生涯の金融資産残高を確認した時に赤字にならないかを確認してください。

どの時期も預貯金が200万円を下回ることなく、90歳の時点で1,000万円以上の預貯金がある場合は、介護費用にも充てられる可能性あるので、安定していると言えます。

もし赤字になった場合は、マイホーム予算もしくは他の支出(車の購入スパンや車両費など)を少しずつ入れ直して調整していき、マイホーム予算を算出していきます。

収入と支出の書き出しをざっくりし過ぎてしまうと、ざっくりなライフプランになって、マイホーム予算も正確ではなくなってしまうので、少し面倒でも書き出しをしっかりやってみてください。

私のような住宅取得専門のFPに依頼することも出来ますが、簡易的に自分で作ってみたいという場合にはこちらの無料シミュレーターをご利用ください。

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まとめ

失敗しない住宅購入のために最も必要なことは、“まず住宅展示場に行って見積もりをもらう“ことではなく、

【自分たちの住宅に掛けてもいい予算を知ること】なのです。

しっかり一生涯のライフプランを作った上で住宅購入金額を決めて計画を進めることにより、

  • 予算をいくらにしたらいいかわからない不安から解消される
  • 予算をいくらにしたらいいかわからない不安から解消される
  • 住宅ローン返済に苦しまなくて済む
  • 他の支出を圧迫せず楽しく生活出来る
  • 老後にお金を残せる
  • マイホームにお金を掛けすぎたという後悔をしなくて済む

という効果を得られます。

住宅購入は人生の通過点です。その後も家族皆さんが楽しく暮らせるような買い物にしてくださいね。